ヤワな二人の南極旅行その顛末 後編

7日目
夜、少し揺れた。起床5時45分。

レーニングキャンプもさらにその厳しさを増す。今日は午前中にホエーラーズ湾に入り散策のあとスイミングチームを結成して南極の海に入るのである。一応ヤワな二人ながらもギアの下には密かに水着を着込む。。。が、すっごい強風じゃん。これって体感温度はマイナス。水温はマイナス1℃。水泳?ありえないでしょ。 

ここは干潮ならば砂場を掘ると温水が湧くと言う火山地帯、でも今朝は満潮。温泉?どこが?

船からゾーディアックに乗り移るのでさえ、さらわれそうな程 高波。


湾はその昔 大捕鯨時代の名残を冷たく残す殺戮の場所。何万頭というクジラがここで殺され処理された場所。湾は常にクジラの血で真っ赤に染まっていたという。ここでも日本船の調査捕鯨の話題が出る。今回の旅では常にこの話題。日本人だからと質問されたって 私は外交官でもあるまいし気の利いた答えなんてないわいな。世界が認めてるんだから違反しているわけでもあるまいし、調査という名前のもとの商業捕鯨とは思いたくないし。。。個人的にはクジラは食べずに見ていたい。子供の頃の給食には頻繁に登場したが、我々と同じほ乳類、保護してやりたい。(調査捕鯨の質問はここをチェック捕鯨問題Q&A|日本捕鯨協会])



さてスイミングチームだが 天気悪くて強風で寒いのでヤワな二人は尻込む。白人さん達はやっぱ頭のたがが外れ易いのかもしれんなぁ。。。


こんなラブリーな光景も披露して下さる。
流石ですわ。



午後 最後の上陸。ハナポイント。ここはハイライトかもしれない。
ペンギンの他象あざらしもアルバトロスも、動物の種類が多い。

ペンギンは好奇心の固まり。近寄ってくる。みんな元気に巣立って欲しい。この環境が永遠に守られますように。
4000ドルの夢のツアーも終わりに近づいてきた。
これからドレイクを抜けてウシュアイアへ戻る。17時の総まとめミーティングが終わった頃から揺れ始めて来た。すかさず酔い止め薬を飲む牛美、夕飯はスキップ。奴豚は今回元気である。


8日目
往路よりは揺れが少ないドレイク海峡だが、何故か今回牛美 完全にダウン。旅の疲れが出たのか。。。6時間おきに酔い止め薬を飲んだのがあだになったか、極度の頭痛。こんどはアスピリンを飲む。薬漬け。。。
ドレイクを渡る時 決まって思い出したのは映画「コア」のドリル掘削船が地中深く掘り進んで行く壮絶な場面であった。振動と音がどうもその場面を連想させるのである。見てない方は暇があれば是非。
食事はフルーツ以外 いっさい受けつけない胃。食欲もなく水を飲み飴を舐める。
二日間で思いっきり痩せた。。
これをドレイクダイエット命名

痩せてないじゃん?


9日目
昨日はベッドでぐるぐるしている間に丸一日終わってしまった。奴豚が介抱してくれるが気分は最悪。ウシュアイアは遠いな、南極は遠いな。。。
午後ビーグル水道に入って揺れが止まった。あぁ 陸地が見える!大地だ!感激。シャワー浴びて荷造りしたらエネルギーを使い果たしてダウン。。。
夕食、久しぶりの日差しを浴びて皆とテーブルに加わる。馬鹿話して笑っていたら、突然前の席のトム氏がのどに何かを詰まらせて呼吸困難になり、即座に奴豚が両手で喉をこじ開け呼吸確保、意識が戻る。咄嗟の判断、トム氏を救う。ヤワなグアノマンもやるときゃやるのである。目が裏返ったトム氏の顔を見たときは、一瞬緊張の走った食堂であった。
22時 ウシュアイアに入港した。最後の晩はドック付けで過ごす。エンジン音のない船室。でも何かと色んな音がしてうるさい。

エネルギーとガッツの固まりのスタッフ達



10日目
最後のモーニングコールアナウンス。このアナウンスは癖になるかもしれない。
船の揺れは止まったが身体の揺れは止まらない。よっぽど三半規管を痛めたのだろう、体中のぐるぐるは止まらないし、目を閉じると目が回る。メニエル病のようだ。目を閉じると目の神経が勝手に動き万華鏡の総天然色の映像を見せてくれる。それだけではない、ともかく目を閉じると目が回るのである。参ったな、眠れない。
8時下船。予約してあった宿へ。仮眠と言っても眠れないのであるが、横になる。
ドレイクのリハビリが始まった。
陸地を歩く喜びを感じ、揺れないベッドを心底有り難く思う。
、、、が、牛美はいつまでたっても1人で揺れていた。。。船酔い 恐るべし。