ヤワな二人の南極旅行その顛末 前編

   
2月18日〜27日

ただいま! 
白い大陸 氷の世界 ペンギンの国 遥か南の果て 南極から戻って来ました。

詳細を一挙公開



南極ツアーの簡単な説明から:
最近では身近になった南極旅行だが 行き方は大きく分けて3種類ある(と思う)
(ここでは日本から予めセットになったツアーに参加する方法は除く)


身近になったとは言え高額旅行であることには変わりない。まずはお金と勢いが必要である。。。
そのポピュラリティーから価格は年々値上がりしている



クルーズツアーは最低10日間から、長いものは一ヶ月もあるが割安感と手軽な日程で10日から14日程度のものが人気でツアーも多い。


インターネットで探す場合はVacation to goのサイトはラストミニッツ(格安バーゲンセール)の情報が多くオススメである。他にもPolar Cruiseで検索しても情報は掴み易い。


なにぶんネットで探して申し込むには高額なので不安が伴う。是非行きたいと思ったらやはりウシュアイアまで来てしまうのが一番だろうと思う。案ずるより産むがやすし。我々も長時間かけてネットで検索したが疑問や保険の確認がしたかったので、結局来てしまって正解であった。


旅行代理店を覗き始めて、めぼしいツアーはすぐ見つかった。必要なのは迅速な決断力のみ。同じ目的でこの地に来ている人ばかりなので考えてから出直して来よう、、では もう売り切れてしまうのである。


これは!というツアーに巡り会ったら その場で即決! クレジットカードを差し出すべし!! 


渋る奴豚に対し牛美の決断は素早かった。

「それ! 行きます! 払います! 今払います!」

なんてったって安くても$4000ドルなのである。10日間のクルーズでお一人様42万円なり。二人で84万円が飛んで行く。。。ね、即決するには勇気と勢いが必要でしょ。



話を戻そう。


3種類とは 1)大型豪華客船でのんびり巡るクルーズ 2)小型船舶で大陸と半島の島々を巡るアドベンチャークルーズ 3)ヨットでのクルーズ 


我々が探した際の情報だが 
1) はラストミニッツバーゲンの場合かなり安く手に入る。船のキャパが大きいので船室も余りが多いのかもしれないが20日間のクルーズで$1500ドルからあった。(全て一人分の値段)バルコニー付きの船室でも$2000ドル程度で空きがあった。料金にはクルーズ中の全ての食事とアルコールを含む飲料が含まれ(食べ放題飲み放題)船にはショーや映画館、プールやフィットネスが完備されている動く娯楽船という感じ。ただし大型船の為、航行コースが限られ小回りが利かない。陸への上陸はしないクルーズのみである。大型船舶なので揺れは少ないだろうから 楽して豪華クルーズを楽しみたい人向け。
○資料詳細は スタープリンセスがキーワード


2) 50人から100人乗りの船で、各国のクルーズツアー会社が船をクルーごとそっくりチャーターするタイプ。ほとんどがロシア船籍。我々が参加したのもこのタイプ。ゾーディアックというゴムボートに乗り換えて大陸やら半島やらいたるところに上陸する。ペンギン島、クジラの湾、氷河や流氷の間をぬって回り、トレッキングもあるアドベンチャーツアー。三食付き、コーヒー、紅茶は飲み放題で3500ドル程度から7000ドルくらいまである。折角南極に来たんだから余す所なく楽しみたい、好奇心と体力のある人向け。(我々はUshuaia Tourismoという代理店で購入。担当の女性が英語堪能、親切丁寧で大変好感が持てたので信用して即決。)
○資料詳細は GAP Adventure Tour カナダの旅行社



3) ヨットなのでさらに小型。少人数で長期間を過ごすので気の合う人同士でないとプライバシーはないかもしれない。20日間くらいからあるが、8〜10人程度の定員。何処へでも行きたい所へ行けるだろう。安くても6500ドルくらいから。食事飲み物付きだが収納スペース上 いずれも放題というわけにはいかないと想像する。ヨット好きには格別の経験になると思われるが、小さなヨットでドレイク海峡を渡る事を想像するだけで恐怖を覚えるのは私だけではないだろう。。。船酔いしないヨット好きで人とは違う南極旅行をしたい人向け。




さて前置きが長過ぎると言われそうなので本題の顛末をば。。

1日目
朝、旅行代理店から貸してもらったゴム長靴と上陸用パンツ、自分の荷物を預けに10時までに指定された場所へ向う。
先に船に積んでもらう為だ。預けてしまったら後は15時半の集合までどこかで時間をつぶしていればいい。
16時乗船。まずは船室と荷物の確認。

参加者65名。船のキャプテン、クルーやツアーのスタッフとの顔合わせと旅の説明。緊急避難の説明と実地訓練などをしている間に18時出航。夕方のまだまだ強い日差しを浴びながら船はゆっくりとビーグル水道を出て行く。19時半最初の夕食。かなり立派で量質サービスともに満足。持参したワインを抜いてデッキで二人で乾杯。船首を泳ぐイルカを見る。まだこの時はドレイク海峡の恐ろしさを知らなかった二人。


2日目
夜半からドレイク海峡に入り船は急に揺れだした。二段ベット上段の牛美は落ちないように踏ん張っていた。7時モーニングコール代わりのアナウンスが流れる。7時半朝食。揺れてはいるが踏ん張って食堂へ行く。卵、ベーコン、ソーセージ、フルーツ、コーンフレーク、ヨーグルト、ジュースなどバイキング形式。
天気予報だと風が強まるそうだ。揺れを覚悟し酔い止め薬が配られる。
船の随所に気分が悪くなった時用の紙袋が手を伸ばせばいつでもどこでも届くように配置されている。
不安を隠せない奴豚。でもまだ笑う余裕があった。

午前中、全員参加で南極の環境保護説明会と南極における注意事項の確認講座。昼食をはさんで午後から海洋動物、鳥類、氷、歴史など各専門家達の30分ずつの抗議が始まる。今日から午前2講義、午後2講義と面白おかしくスタッフが話をしてくれるのである。これから訪れる場所の説明などもあり、強制参加ではないが大変ためになるのである。
午後、奴豚船酔いでダウン。さらに揺れる。頑張って講義に参加していた牛美だが講義中も参加者全員テーブルにしがみついて足を踏ん張って必死であった。講師も右や左に大きく揺れながらの大奮闘の講義であった。途中「しがみつけ〜!」とか「頑張れ〜!」などの激励をかけながらの熱弁授業。頭下がります。。。スタッフの皆さん。ホント。。凄い人達です。奴豚の様子をちょくちょく見に行くが、まったくイっちゃってました。。。可哀想に蒼白。ゲロ袋を回りに集めて、うんうん唸ってる。水飲ませたり、フルーツ口に入れたり、ミントキャンディーや歯磨き粉を舐めさせてみた。胃はすでに空っぽなのに吐き気は止まらず。。。そんな奴豚を介抱していた健気でタフな牛美もとうとう船酔い。でも吐いてすっきり。
ブログのタイトルを『タフな牛美とヤワな奴豚の〜〜』に変更しようかと一瞬思う。


3日目
昨夜からさらに揺れが強まり一晩中ぐるんぐるん回って揺れていた。朝食はオレンジジュースを飲んだだけ。講義は全て延期。食堂へ行くのが不可能な人の為に、昼、夕食共に各部屋へ届けてくれるというサービスが有り難い。ロシア人クルーは頑強である。笑顔でサービスしてくれる。ウエイトレスの女性はヒールにミニスカートで涼しい顔をしている。敬服。。。食欲は全くなし。食事の匂いすら辛い。ベッドから起き上がる事が出来ない。ただただ黙って狭く暗い船室のベッドで耐えるのみ。身体中がぐるぐるする。胃が上下左右、前後左右に回る。目も回る。奴豚の症状はさらに悪いようで、吐き気と戦っている。新鮮な空気を求めてデッキになんとか這い出てみたが、燃料の匂いにやられてさらに気分悪し。こんなに南極が遠くて辛いなんて。。。楽しい事を思い出して気を紛らわそうと必死であった。



4日目
夜中にやっと揺れがおさまる。とうとうドレイク海峡を抜けた。南極半島に着いたのである。あぁぁぁ。。。神様。。 やっと元気を取り戻す。
朝食は全員集合に近かった。どの顔にも疲れとやつれが見えるが 南極への期待で頑張る。雪。外気温は1℃。南極の夏はそれほど寒くない。曇りで視界悪し。ツアー客にアジア勢は私を含めて4名。中国人2名、日本人男性が1人。他はカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ヨーロッパ、アメリカで船内の公用語は英語。通貨は米ドル。
最初のゾーディアック(ゴムボート)。

まずは氷山を見て回る。すかさず午後には2回目のゾーディアックでペンギンコロニーへ。ジェンツーペンギンがうんじゃうんじゃ、わんさかんさといる。島の頂上までトレッキング。大地を踏みしめられる幸福を味わい下りはスロープを滑って下りる。ペンギン達は本当に愛らしい。海から餌をたらふく食べて子供の所へ一目散に帰る姿、親の愛は無償である。美しい。一人残らず元気に育って欲しい。糞は、半端じゃなく臭いが素晴らしい動物である。クジラも見たし収穫の多い一日。


5日目
朝食は6時45分。皆、眠い目をこすってボーッとしながら食事。8時にすぐゾーディアックで出発。いよいよ南極大陸の地に足を下ろす。アルゼンチンの基地(2名が夏の間の五ヶ月をこの基地で過ごすそうだ。。。大変)はペンギンコロニーの隣。丘を登って滑り降りて雪合戦で子供に帰る大きな大人のツアーメンバー達。




景色が美しすぎる。。。



晴れて日が差し、限りなく果てしなく美しい光景。

昼の後再度ゾーディアックで湾内を巡る。ミンククジラ、アシカ、アザラシ、ペンギンと恐ろしくも美し流氷、氷山を見て回る。氷というのは本当に美しいものである。青く、自然の彫刻芸術、崩れ落ちる音があたりを轟かす。静かな青い世界。
遥か遥か彼方の山々が神々しい美しさ。写真に収まらないのが残念だ。。。

船に戻ってのんびりと思ったら、夕食後三度目のゾーディアックで出るという。天気が良いうちに逃さず見て回るらしい。アデリーペンギンのコロニーへ行く。島へ着く前から糞の匂い。強烈だけど可愛い。許せる。
(これはジェンツーペンギン)

奴豚が滑って転んで糞まみれになる。。。絶句である。


島は笑いで溢れて、一躍有名人になる。糞のことを「グアノ」と呼ぶ。その日から奴の名前がグアノマンになったことは言うまでもないであろう。その夜の船室の臭かった事ったら。。。



6日目
悪夢にうなされ眠れない夜のあと、朝食7時半。眠い。流石に疲れて来た。。。
二人で84万円也の豪華ツアーは実は「南極トレーニングキャンプ」であった。
早朝からアナウンスで起こされる。ゾーディアック乗船の為にギアを速攻身につける。
食事の合間にトイレもせにゃならんし、沢山着てるから脱ぐの大変だし、船の乗り降りは迅速にきっちり行わねばならんし、ボーイスカウト並かも。。。
今日がツアーの最南端。ウクライナの基地に寄る。約40名程が気象や自然の研究をしているそうである。冬の間は日照時間1時間程度で強風が吹きまくるそうだ。娯楽はDVDの映画と読書と言っていた。丁度明日、1年の任期を終え、交代で故郷に帰る時だったので隊員の方がとても嬉しそうだった。しかし波が高かったので乗り降りでパンツまで濡れた。戻って夕食はオフィサーディナーで正装って書いてあったのでちょいとすかして化粧してみたけど なんだ皆あんまり普段と変わらん格好でかえって浮く。。。なんだよ。。。